「AI創薬の時代と言われるけど、この先の製薬企業の社員の仕事はどうなるの?」
「薬学部に入って将来は製薬会社に就職したいと思っているけど、どんなことを勉強しておくといいの?」
最近はそんなことを思う人も多いかもしれません。
僕は今製薬企業に勤めていますが、僕の周りにも同じような疑問を持っている人もいますね。
ただ、結論から言ってしまうと、「
」です。実際今の僕も、いろんな仕事で毎日大忙しです。
「AIが仕事を奪う?うそでしょ・・・。AIが導入されるせいで無限に仕事がある・・・。」
僕としては辛い部分もないわけではないですが(笑)、まあそんな状態です。
この記事では、そんな僕の経験も踏まえて、これからの製薬業界を生き抜いていくために必要なスキルセットについて解説します。
この記事を読み終わるときには、「
」という具体的なイメージを持てるはずです。AIがあるからこそ、活躍できる!そんな「創薬エンジニア」になるためにどんなスキルを身につけるべきか解説します。
プログラミング
まず、最初に必要なのが、全ての基礎にもなるプログラミングのスキルです。
日常業務を効率化したり、複雑な計算を実行するために使えます。
どのプログラミング言語を覚えればいいかということについては、とりあえず「Python(パイソン)」から始めることをおすすめします。
理由としては、製薬会社でプログラミングを使う業務のほとんどはPythonでできてしまうから、です。
そしてもし余力があれば、「R(アール)」も覚えておくと良いと思います。
論文で発表されている解析手法がR言語のスクリプトとして公開されていることも多く、それを読むためにはR言語の知識が必要になるからです。
といっても、PythonとRはよく似たプログラミング言語なので、
はずです。プログラミング言語については、以下の記事に書いています。
機械学習
次に必要なスキルとして、機械学習があります。
機械学習というのは、あるデータセットをコンピューターに学習させ、そこから導き出される経験則をもとに、別の新しいデータに対して予測をする、というものです。
といっても分かりにくいと思うので、具体例などを含めて以下の記事で解説していますので、ぜひ読んでみてください。
機械学習で大事なのは、データの間にある法則性をどうやって見つけるか、またそのためにデータの取り扱いをどう工夫するか、といったところです。
これから下で解説する、ケモインフォマティクスやバイオインフォマティクスでもよく使われます。
ケモインフォマティクス
ケモインフォマティクスというのは、情報科学の技術を用いて、化合物の構造と薬の効き目や体内動態などとの関係を解析する手法になります。
「化合物」に着目するというのがポイントで、薬として市販できるようにするにはどんな構造の化合物を合成すればよいのかを考えるときに、ケモインフォマティクスの手法が使えます。
こちらも具体的なイメージを持ちたい人は、以下の記事で詳しく解説していますので、ぜひ読んでみてください。
ケモインフォマティクスとは何か、ざっくり説明すると「化合物の構造をコンピューターに読み込ませて機械学習を使って解析する」といった感じです。
バイオインフォマティクス
バイオインフォマティクスというのは、情報科学の技術を用いて、生命現象を解き明かす手法になります。
こちらは「生物」に着目するのがポイントで、病気の人と健康な人は何が違うかとか、薬を飲む前と飲んだ後で身体にどんな変化があったかとかを解析するときにバイオインフォマティクスの手法が使えます。
バイオインフォマティクスのすごいところは、
、ということです。こちらも具体例などは以下の記事にまとめておきましたので、読んでみてください。
複雑な生命現象を、パソコン1台でデータ解析するというのは、ロマンにあふれた面白い仕事だと僕は思っています。
分析化学
あまりAI創薬とは関係がないと思われがちですが、分析化学も大事な知識です。
僕は、大学の研究室に在籍していた時に分析化学を勉強して、製薬企業に入社しましたが、この
。製薬企業では、質量分析(mass spectrometry: MS)や (nuclear magnetic resonance: NMR)などの分析技術がよく使われます。
そして、実験データは多くの場合、MSやNMRから出てくるものです。
なので、こうした分析データを正確に解析できることは、AI活用を考えるうえでも不可欠です。
また、このような分析データの解析は、普通にやると目視、手作業による確認になることも多く、長時間を要することもよくあります。
そんなところに、データ解析用のプログラムを作ることができれば、業務効率化につなげることもできるわけです。
ここで大事なのは、製薬会社の研究職の中では、分析化学が全く必要ない部署はおそらくないので、
、ということです。プログラミングやデータ解析は、製薬会社の大部分の社員からは敬遠される傾向があるので、そうした人たちと接点を持つという意味でも、分析化学の知識は持っておいて損はないです。
実際に僕も、分析関係の仕事で研究関係の全ての部署の人とつながりを持つことができました。
そして、その人たちにプログラミングを使って日頃困っていることを解決してあげているので、
。ということで、分析化学は「全ての創薬研究の基礎」といっていいぐらい大切な知識です。
詳しくは、以下の記事で解説しています。
英語
英語もまた、いろいろな仕事に関わってくる大事なスキルです。
詳しくは以下の記事に書いていますが、特に「書く」力が製薬会社では重要になってきます。
実験の計画書や報告書を英語で書いたり、人によっては研究成果を論文に書く人もいるでしょう。
そして、英語を書く力は、実はプログラミングのスキルとも大きく関係してくるので、プログラミングの勉強と並行して英語力を伸ばすこともできます。
このことについても、上で紹介した記事で解説しています。
まとめ
この記事では、「創薬エンジニア」になるために必要なスキルセットについて解説しました。
もう1度内容をおさらいしておきましょう。
- プログラミング:全ての基礎になるスキルです。とりあえずはPythonから勉強を始めましょう。
- 機械学習:ケモインフォマティクスやバイオインフォマティクスなど、AI創薬の基盤になる技術です。
- ケモインフォマティクス:化合物に着目して、薬になるのにふさわしい化学構造にするための
- バイオインフォマティクス:生物に着目して、病気の原因や薬の効き目を解析することができます。
- 分析化学:創薬研究の実験で出てくるデータを解析するための基礎になります。
- 英語:製薬会社の仕事では「ライティング」が大事です。正しい英語を書くスキルは実はプログラミングの力と共通するところがあります。
いきなり全部を身につけるのは難しいので、まずはとりあえずプログラミングの勉強から始めると良いと思います。
と言っても過言ではないので、あとは実際に製薬会社で仕事をしながらでもスキルを伸ばすことができます。
そして、プログラミングの勉強を始めるときには、まずは以下の記事から読み始めてもらえればと思います。
この記事で紹介したスキルを身につけてしまえば、
「創薬エンジニア」になれることは間違いないでしょう。ここで紹介した6つのスキルがあれば、AI時代になっても長い間製薬業界で活躍できる研究者になれるはずです。