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大学は工学部に入り、生物や化学を中心に授業を受けました。

レポートの提出が必要な授業もちょくちょくありましたが、僕は全て手書きで作成しました。

周りの学生はみんなパソコンで作っていましたが、僕はただ面倒くさいという理由だけでパソコンの使い方も覚えようとしませんでした。

そして、4年生になると機械学習統計解析を扱う研究室に配属されました。

さすがにパソコン音痴ではやっていけないので、ブラインドタッチから始めて、少しずつ慣れていった感じです。

多くの学生がレポート作成のために使っていたワード(Microsoft Word)やエクセル(Microsoft Excel)もこのときにようやく使い方を覚えました。

最先端の分析機器が並び、そこから出てくる膨大なデータをひたすら解析する、そんな毎日が始まりました。

これが、「創薬エンジニア」に向けた第一歩となりました。

プログラミング学習での挫折

データ解析は、エクセル (Microsoft Excel) でも、もちろんできなくはないんですが、コピー&ペーストなどの単純作業を繰り返したり、条件によって計算式が変わるところをいちいちセルに打ち込んで行ったり・・・と、なかなか骨の折れる作業の連続でした。

解析するデータのサイズが大きければ大きいほど、解析にかかる時間も長くなってしまうので、なるべく多くのデータを収集したいとは思いつつも尻込みする、という日々が続きました。

そんな中、エクセルのマクロ (Excel VBA) で作業を自動化しようと思い立ったのが、僕とプログラミングの出会いでした。

解析作業を自動化できれば、これまで時間がかかっていた解析が短時間でできるようになるだけではなく、より大きなデータも簡単に扱えるようになる、と思ったんです。

一念発起し、専門書を買ってそれを見ながらコードを打ち込んで勉強をし始めたのですが、「これはどういう意味?」「なんでこんな書き方するの?」などと、頭の中がクエスチョンマークでいっぱいになってきました。

本の最初の基礎の部分から理解しながら進めているはずなのになんで理解できないんだ・・・

プログラミングができる人は当たり前のように理解できるんだろうけど、僕には理解できない・・・

そんな辛い思いで頭がいっぱいになってきました。

きっと、僕は、プログラミングには向いていないんだ・・・

そう思って、プログラミングの勉強をあきらめてしまいました。

結局、プログラミングは使わず、ゴリゴリの手作業で博士論文を書き上げ、製薬企業に就職しました。

それでも避けては通れなかった、プログラミング

会社に入ると、出身研究室の専門領域の関係もあり、データ解析関連の仕事を任されることが多くなりました。

今自分が持っている知識だけでなく、論文や学会で発表されている最新の解析手法を社内に取り入れるのも大事な仕事です。

そこで出くわしたのが、やはりプログラミング・・・。

社内で使ってみたいと思った解析手法が、Rというプログラミング言語で書かれていたのです。

論文中にも説明はありますが、詳細はR言語のスクリプトを見ないと分かりません。「とりあえずスクリプト読んでみるか」と思っても、読めるはずもなく・・・。

結局、この解析手法の取り入れは延期せざるを得なくなってしまいました。

プログラミングに再挑戦、そして実務で成果を上げるまで

「このままでは社外の有用な解析技術を利用することができない」と思った僕は、再度プログラミングの勉強をすることを決意します。

そこで、過去の挫折体験も踏まえ、勉強のコツをネットで調べました。

そこで得られた情報をもとに勉強を進めていくと、みるみるうちに「プログラミングができる!」という実感を持てるようになりました。

それから、実務での練習も兼ねて社内業務の自動化に取り組みました。

すると、業務にかかる時間を従来の10分の1にまで短縮することに成功し、周りの社員に感謝されながら自身のスキルアップも実現することができたんです。

このように創薬研究をプログラミングの力で推進する「創薬エンジニア」として、日々研究にあたっています。

ゆきやが製薬業界に進んだ理由

上で書いたように僕は工学部の出身ですが、どうして製薬業界に進もうと思ったかと言うと、薬創りを通して世の中の人たちの幸せな時間を少しでも多くすることに貢献したかったからです。

僕が大学、大学院を卒業する1年前に祖父母が他界し、「あと1年でも長く生きてくれれば・・・」と思ったことがきっかけです。

きっと同じような思いをする人は他にもいて「今までにない新しい薬を創ることで大切な人との時間を少しでも多く持てる世の中にしたい」と思ったことが僕が今製薬業界で仕事をしている動機です。

また、大学時代の研究室で学んだ技術が、新しい薬の標的を見つけたり、今ある薬を他の疾患の治療に使う方法を考えたりといったことに使えるということも、製薬企業で研究をしたいと思った理由の一つです。

このブログを訪れた皆さんへ

皆さんの中には、「これから製薬業界で活躍したい」という思いを持ってこのブログを訪れてくれた人もいると思います。

今の製薬業界は新しい薬がなかなか出ず、何とか革新的な薬の開発をしようと、四苦八苦している状況です。

そんな中、AI創薬(ビッグデータ創薬)というのが最近注目されるようになってきました。

これは、AI(人工知能)によって、新しい薬の標的や化合物を見つけようというものです。

これが実現すれば、今よりもはるかに低いコストで薬を開発できると期待されています。

でも、製薬企業の中の事情はというと・・・AIや機械学習を使いこなせる人材がほとんどいないというのが現状です。

入社時はプログラミングが全くできなかった僕でも、ちょっと勉強すれば大活躍できているというのが現状なんです。

これから製薬業界に入ってくる皆さんに言いたいこととしては、AIや機械学習のスキルは必須ということです。

今、製薬会社で行われている様々な実験も、AIで置き換えていこうという動きが出てきています。

これは化合物の合成や薬理実験など、いちいち時間をかけて結果を見るよりも、AIでシミュレーションをして、望ましい結果が出そうなときのみ実際に実験をして確認する、というのが効率的なのではないか、という考え方です。

これからの製薬業界ではこうした考え方が一般的になっていくような気がしています。

そうなってくると、これまで合成や薬理実験を仕事にしていた人たちは必要なくなってしまう(これから製薬会社に採用する人材としては必要ない)ということになります。

なので、AIや機械学習のスキルは今後数十年を製薬業界で生きるためには必須になります。

とはいえ、現在の製薬業界はAI人材が圧倒的に人手不足な状況なので、「AI使えます」「機械学習できます」「プログラミングできます」といったことをエントリーシートに書いておくだけで、面接前に採用が決まってしまう、なんてこともあるんじゃないかなと思います。

また、製薬以外の業界でも、AIを使いこなせる人材が重宝されるのではないかと思います。

業種によっては「AIが仕事を奪う」なんていう話もあるようですが、AIを使う側に回ってしまえば、仕事はなくなるどころか増えていきますよね。

このブログでは、「創薬エンジニア」として活躍するために必要なスキルである「プログラミング」「機械学習」「バイオインフォマティクス」「ケモインフォマティクス」「分析化学」「英語」について、勉強するときに知っておきたい考え方(マインドセット)や、実務で必要になる知識について書いています。

製薬企業に入る前にこうしたスキルを身につけて、僕と同じように「創薬エンジニア」として活躍してくれる人が増えることを願っています。