分析技術まとめ
強い疑問を持つ女性読者

「大学の分析化学の授業ではいろんな分析技術を習うけど、製薬会社で必要になるのはどれなの?」

「創薬研究で大事になる分析技術はどれなの?」

そんな疑問をお持ちの皆さんにこの記事を書いています。

実際僕も大学で分析化学の授業を受けた時は内容が盛りだくさん過ぎて、何を覚えればいいのか、将来就職した時に何が役に立つのか、全然分かりませんでした。

でもそんな僕でも、今となっては分析化学を専門知識の一つとして製薬会社で日々業務にあたっています。

そこでこの記事では、製薬会社に就職するにあたって必要な分析化学、特に分析技術に焦点を当てて説明します。

この記事を読めば、分析化学の教科書のどこを重点的に勉強すれば良いかが分かり、創薬の現場で即戦力にもなるための具体的な勉強法が分かります

知っておきたい分析技術

製薬会社で使われる分析技術の多くは、分析するサンプル中の成分をあらかじめ分離して、それから分離されたものを順番に検出する、という流れになります。

分離技術と検出器について、以下で解説していきます。

分離技術

液体クロマトグラフィー

液体クロマトグラフィー(liquid chromatography: LC)というのは、液体を移動相とするクロマトグラフィーのことです。

分析試料中に含まれる化合物は、カラムの固定相に保持され、化合物の物性によって決まった時間に溶出されます。

新薬候補になる化合物のほとんどが分析できるため、LCは製薬会社で一番よく使われている分離技術と言って良いでしょう。

この化合物が溶出される時間(保持時間)が、化合物の物性と大きく関わってくるので、構造推定のときなどに大事な情報になってきます。

LCの原理などについては、別の記事で解説予定です。

ガスクロマトグラフィー

ガスクロマトグラフィー(gas chromatography: GC)というのは、気体を移動相とするクロマトグラフィーのことです。

移動相が気体のため、上記のLCと比べて分離能が高いですが、揮発する化合物でないと測定できないため、新薬候補の化合物をそのまま分析するのは難しい場合が多いです。

製薬会社での用途としては、LCでは測定が難しい化合物を測定するために用いることが多いです。

GCの原理などについては、別の記事で解説予定です。

超臨界流体クロマトグラフィー

超臨界流体クロマトグラフィー(supercritical fluid chromatography: SFC)というのは、超臨界流体を移動相とするクロマトグラフィーのことです。

超臨界流体というのは、物質ごとに決まっている特定の温度と圧力を超えた状態を指していて、イメージとしてはものを溶かす力のある気体のような感じです。

液体と気体の両方の性質を併せ持っているわけです。

製薬会社では、光学異性体を分取するときによく使われます。

SFCの原理などについては、別の記事で解説予定です。

キャピラリー電気泳動

キャピラリー電気泳動(capillary electrophoresis)は、クロマトグラフィーと異なり試料中の化合物を電気泳動により分離する方法です。

荷電したイオン性の化合物に対してよく用いられます。

CEの原理などについては、別の記事で解説予定です。

検出器

質量分析

質量分析(mass spectrometry: MS)は、製薬会社の仕事の中心になる検出器と言って良いと思います。

名前の通り、試料中に含まれる成分の質量の情報を取得することができます。

とても感度が高い検出器なので、血液中の微量成分でも検出することができます。

MSの原理などについては、別の記事で解説予定です。

紫外検出

紫外(ultra violet: UV)検出は、MSと並んでよく用いられる検出方法です。

紫外線の吸収があるベンゼン環などの構造をもつ化合物を検出することができます。

LCのカラムを通った後にUV検出器を通って、それからMSに導入されるという流路をとっている場合が多いです。

UVの原理などについては、別の記事で解説予定です。

核磁気共鳴

核磁気共鳴(nuclear magnetic resonance: NMR)は、化合物の構造推定に向いた検出方法です。

MSでもある程度は構造推定をすることができますが、同じ重さの複数の構造が考えられる場合は絞り込むことができないことが多いです。

そんなときにNMRを使うと、化合物のどの位置にどんな官能基がついているのか等が分かります。

化合物の構造が決まると、体内でどんな代謝を受けるのか、そのメカニズムもより詳しく知ることができるわけです。

NMRの原理などについては、別の記事で解説予定です。

おすすめの勉強法

上で書いた分析技術のうち、製薬会社で最もよく使うのは、LC/MSです。

なので、まずはLCとMSの基礎知識を身につけておくことが大事です。

LCとMSについて、初心者向けに解説された本がありますので、以下で紹介します。

これならわかる液体クロマトグラフィー(化学同人)

LCを使う上で必要になる知識について、コンパクトにまとめられています。

2~3ページが一つのセクションになっていて、全体でも130ページ程度と、読むのにそれほど時間はかかりません。

詳しくは以下の記事に書いていますので、読んでみてください。

液クロ初心者には「これならわかる液体クロマトグラフィー」がおすすめ!

これならわかるマススペクトロメトリー(化学同人)

MSの原理や実際に使う時の注意点などについて、分かりやすくまとめられています。

「これならわかる液体クロマトグラフィー」と同様に、2~3ページで内容が完結するようになっているので、すきま時間に少しずつ読み進めるという使い方もできます。

詳しくは以下の記事に書いていますので、読んでみてください。

質量分析初心者には「これならわかるマススペクトロメトリー」がおすすめ!

まとめ

この記事では、製薬会社でよく使われる分析技術について解説しました。

もう一度要点をおさらいしておきましょう。

  • 製薬会社で使われる分析技術は色々あるが、最もよく用いられるのは、LC/MS。
  • LC/MSで構造を決定できない化合物に対しては、NMRを用いる場合もある。

分析化学は創薬研究の根幹をなす学問領域なので、今日からでも勉強を始めましょう。